コラム

2022年の住宅ローン減税見直しで何が変わる?大きな変化ポイントは4つ

2021年12月に取りまとめられた「令和4年度税制改正大綱」。

従来の住宅ローン減税が大きく見直され、控除率が大幅に下がったことで、この改正案を「改悪」とする声が多く上がっています。

その一方で、負担が減る世帯も意外に多いという声もあり、不動産業界を中心にさまざまな議論がなされています。

今回は、そんな「令和4年度税制改正大綱」によって住宅ローン減税がどう変わるのかをポイントごとに見ていきましょう。

住宅ローン減税の見直しで変わる4つのポイント

今回の見直しによって変わるポイントは、大きく以下の4つです。

  • 減税制度の適用期間が2021年→2025年までに延長
  • 控除率が1.0%→0.7%に引き下げ
  • 控除期間が10年→13年に延長
  • 借入上限額の変更

減税制度の適用期間が2021年→2025年までに延長

現行の住宅ローン減税は、2021年末が期限(契約期限:2021年11月30日/入居期限:2022年12月31日)とされていました。

そのため、税制が変わる前にと慌てて住宅購入に踏み切った方もいらっしゃることでしょう。

今回の見直しでは住宅ローン減税の制度自体が4年間延長され、2025年末が期限となりました。

控除率が1.0%→0.7%に引き下げ

今回の見直しの中でも、特に影響が大きいとされているのが「控除率」の変更です。

そもそも住宅ローン減税とは、住宅ローンを利用して住宅を取得した人が、原則10年にわたって受けられる控除のことです。

「毎年末の住宅ローン残高」または「住宅の取得対価」のうち、少ない方の金額に控除率をかけ合わせて算出した金額(控除額)が所得税から控除されることとなります。

従来の住宅ローン減税では控除率が「1.0%」でしたが、今回の見直しで「0.7%(新築・中古ともに)」に引き下げられることとなりました。

つまり、住宅ローン残高が3,000万円だった場合、以前であれば30万円分の控除を受けられたところが、今後は21万円分しか受けられなくなるというわけです。

これを受けて「改悪」とする声が多く上がっていますが、以前は住宅ローンの金利を控除率が上回る「逆ザヤ」状態が続いていたため、妥当な見直しであると考えられます。

控除期間が10年→13年に延長

先述したとおり、住宅ローン減税の控除期間は原則10年(特例では13年)となっていますが、今回の見直しによって、新築住宅の控除期間が原則13年に延長されることとなりました。

なお、中古住宅の控除期間は10年に据え置きとなります。

借入上限額の変更

住宅ローン減税を受けられる借入残高には上限があり、一定の要件を満たした認定住宅の場合は5,000万円、それ以外の一般住宅は4,000万円が上限とされてきました。

しかし、今回の見直しでは上限額の変更や住宅区分の詳細化などが行われています。

  • 長期優良住宅などの認定住宅:上限5,000万円
  • ZEH:上限4,500万円
  • 国が定める省エネ基準を満たした住宅:上限4,000万円
  • それ以外の一般住宅:上限3,000万円

※2022~2023年に入居した場合

※2024~2025年に入居した場合、認定住宅では上限から500万円、その他3種の住宅では1,000万円がそれぞれ引き下げられる

一般住宅の上限自体は3,000万円に引き下げられましたが、環境性能に優れた住宅(認定住宅・ZEH・省エネ基準の3種類)に対しては、性能の高さに応じて優遇措置が設けられています。

以前までは、優遇措置が設けられているのは「認定住宅」の1種類のみでした。

しかし、認定住宅として認められるためのハードルが高いため、優遇措置を享受できる世帯はそう多くありませんでした。

今回の見直しで「ZEH」「省エネ基準」の2種類が優遇対象として追加されたことにより、優遇措置を受けられる世帯は増加すると考えられます。

これが、冒頭でお伝えした「負担が減る世帯も意外と多い」の理由なのです。

住宅の種類ごとの最大控除額などまとめ

ここまでご紹介してきた内容を、改めてまとめたものが以下の表です。

新築 / 中古住宅の種類控除率控除期間借入上限額1年間の最大控除額トータルの最大控除額
新築住宅認定住宅0.7%13年5,000万円35万円455万円
ZEH0.7%13年4,500万円31.5万円409.5万円
省エネ基準0.7%13年4,000万円28万円364万円
一般住宅0.7%13年3,000万円21万円273万円
中古住宅認定住宅0.7%10年3,000万円21万円210万円
一般住宅0.7%10年2,000万円14万円140万円

※借入上限額は、2022~2023年に入居した場合

■新しい住宅ローン減税のポイント

  • 控除率は一律で0.7%に
  • 控除期間は新築が原則13年、中古が原則10年
  • 借入上限額は住宅の環境性能ごとに新築4種・中古2種に分けて設定
  • 一般住宅の控除額は下がるものの、環境性能に優れた住宅への優遇措置は手厚くなる

まとめ

今回の見直しは、以前より優遇されてきた認定住宅に加え、ZEHや省エネ基準を満たした住宅への優遇措置が追加されるなど、より環境に配慮した住宅の普及促進の姿勢が伺える内容となりました。

認定住宅などの高性能住宅は、一般的な住宅に比べて物件価格が高いもの。

しかし、光熱費を安く抑えてランニングコストを浮かせられることに加え、こうした優遇措置をフルに活用することもできるため、長い目で見ると得をすることも多いのです。

環境問題への取り組みが重視される世の中において、今後、高性能住宅の需要はさらに高まっていくことでしょう。

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