コラム
企業型DCをわかりやすく解説!話題のiDeCoとの違いも丸分かり
今、新たな福利厚生制度として注目されている「企業型DC」。
2021年3月末時点での導入企業は約38,300社にのぼり、今後はさらに導入企業・加入者の増加が予測されている人気の制度です。
この記事では、そんな企業型DCを分かりやすくシンプルに解説しています。
iDeCoとの違いについても解説していますので、ぜひこの記事を情報整理にお役立てください。
企業型DC(企業型確定拠出年金)とは
企業型DC(企業型確定拠出年金)とは、企業が掛金を拠出してくれ、加入者である従業員自身が運用する仕組みの年金制度です。
加入期間中に積み立ててきた掛金と運用益は、定年退職を迎える60歳以降に「一時金(退職金)」あるいは「年金形式」で受け取ることができます。
究極に分かりやすく言ってしまえば、
企業「将来あなたに渡す予定の給付金を掛金として出しておくから、あなたが自由に運用してね。しっかり運用できたら、そのぶん給付金の総額が増えるよ」
というような制度です。
運用益が非課税・掛金が全額所得控除(※)・受取時にも控除が受けられる、といった税優遇の影響もあり、年々加入する企業や従業員が増えています。
※:マッチング拠出(詳細後述)により加入者が拠出したぶんの掛金に限る
企業型DCに加入するためには、企業型DCを導入している企業に勤務する必要があります。
なお、加入に際しては、
- 企業に入社すると、自動的に企業型DCにも加入することになる
- 企業型DCに加入するかどうかを任意で選択できる
の2パターンが考えられますので、入社前に確認しておくといいでしょう。
掛金の上限額は、
- 他の企業年金がある場合:月額2万7,500円
- 他の企業年金がない場合:月額5万5,000円
と定められており、これを超えない範囲で企業側が設定します。
一般的には、役職などに応じて掛金が設定されます。
※「他の企業年金」とは、厚生年金基金、確定給付企業年金など
なお、企業の掛金に従業員が掛金を上乗せできる「マッチング拠出」という制度があり、
- 従業員が拠出する掛金が、企業が拠出する掛金の金額を超えないこと
- 企業・従業員それぞれが拠出する掛金の合計額が、掛金の拠出限度額を超えないこと
の要件を満たす範囲であれば、任意で掛金を上乗せすることも可能です。
企業が拠出してくれる掛金だけでは満足できない、といった場合にぜひ積極的に活用したい制度です。
ただし、企業によってはマッチング拠出制度を導入していないこともありますので、こちらも入社前に併せて確認しておきましょう。
企業型DCとiDeCoの違い
企業型DCと似たものに「iDeCo(イデコ)」があります。
どちらも確定拠出年金(※)である点は同じですが、掛金の拠出元など、さまざまな点で違いが見られます。
※:毎月一定の掛金を拠出し、加入者自身が運用する仕組みの年金制度。将来支給される年金額は運用結果に応じて変動する。
企業型DC | iDeCo | |
加入条件 | 企業型DCを導入している企業の従業員 | なし |
加入年齢制限 | 65歳まで(2022年5月以降は70歳まで)※企業により異なる | 60歳まで(2022年5月以降は65歳まで) |
掛金の負担・決定 | 企業 | 個人 |
掛金の拠出限度額(月額) | 他の企業年金がない場合:5万5,000円ある場合:2万7,500円 | 1万2,000円~6万8,000円※職業などによって異なる |
運用商品 | 企業が選定 | 金融機関が選定 |
手数料 | 企業が負担 | 個人が負担 |
もっとも大きな違いは、企業型DCは企業が、iDeCoは個人(加入者)が主体となっている点です。
企業型DCの場合、掛金や手数料は企業が負担してくれますが、掛金の金額や運用商品の選定を個人が自由に行うことはできません。
なお、条件を満たしていれば、企業型DCとiDeCoは併用することも可能です。
現時点(2022年4月時点)では、企業側がiDeCoへの同時加入を認めている場合にのみ併用することができますが、2022年10月以降は規約がなくともiDeCoとの併用が可能になります。
※:企業型DCとiDeCoを併用する場合、iDeCoの掛金限度額は月額1万2,000円~2万円に制限される。
企業型DCだけでは老後資金に不安があるという人も、iDeCoを併用すれば、より老後への備えを充実させることができますよ。
企業型DCのメリット・デメリット
老後の資産形成にも役立つ企業型DC。
そんな企業型DCのメリットとデメリットを見ていきましょう。
まずはメリットからです。
企業型DCのメリット
企業型DCのメリットは、大きく以下の3つです。
- 3つの税優遇を受けることができる
- 口座管理手数料も企業が負担してくれる
- 積立金は離転職時に持ち運ぶことが可能
企業型DCでは、「運用時(運用益が非課税)」「拠出・投資時(掛金は全額所得控除)」「受取時(公的年金等控除or退職所得控除)」の3つのシーンで税優遇を受けることができます。
また、企業から離職・転職する場合には、積立金を持ち運ぶことが可能。
転職先が企業型DCに加入している場合、転職先の制度に加入することになります。
転職先が企業型DCに加入していない、あるいは離職する場合、企業型DCの資産をiDeCoに移換することができますので、これまで積み立ててきた資産を無駄にすることがありません。
企業型DCのデメリット
一方、企業型DCには以下のようなデメリットもあります。
- 一定の運用能力が求められる
- 運用次第では元本割れのリスクがある
- 原則60歳まで引き出しできない
資産運用を行う以上、一定の運用能力が必要となります。
また、運用商品の中には元本割れリスクがあるハイリスク・ハイリターン商品もありますので、そうした商品を選んで運用に失敗した場合、受け取れる給付金が掛金を下回ってしまう(元本割れ)の恐れがあります。
企業型DCは「年金」ですので、給付は原則60歳以降となる点にも注意が必要です。