コラム
社会問題になったシェアハウス「かぼちゃの馬車」1,213物件再生へ
多くの自己破産者を出し、2018年に大きな社会問題となった「かぼちゃの馬車」事件。
被害者の多くが不動産投資初心者であったこともあり、「不動産投資は怖いもの」という誤った印象を世間に植え付けてしまった忌まわしい事件です。
事件から4年が経過した今、ついに「かぼちゃの馬車」物件の再生事業が本格的にスタートしました。
再生に向け、いったいどのようなプランが進められているのでしょうか。
米投資ファンド「ローンスター」による再生事業開始
2022年3月25日、スルガ銀行がシェアハウス関連融資債券の譲渡を発表しました。
譲渡先はアメリカの投資ファンド「ローンスター」。
譲渡の対象となったのは、かつて社会問題にもなった女性向けシェアハウス「かぼちゃの馬車」を含む、首都圏のシェアハウス522物件です。
ローンスターは2020年と2021年にもスルガ銀行からシェアハウスの債権を譲受しており、今回の譲渡によって、取得したシェアハウスは合計1,213物件、総額は1,490億円となりました。
1,200件超ものシェアハウス、しかもその多くは事件の記憶もまだ新しい「かぼちゃの馬車」の物件ということもあって、ローンスターによる巨大再生事業に大きな注目が集まっています。
どうやって再生する?ハドソン・ジャパンの戦略は
取得した物件の運営は、ローンスター傘下の資産運用会社「ハドソン・ジャパン」が担うこととなります。
ハドソン・ジャパンが掲げるシェアアパートの新しいブランド名は「TOKYO β(トーキョーベータ)」。
「仮住まい」をコンセプトとし、地方からの上京者や来日間もない外国人留学生といった若者をメインターゲットに据えています。
「運用利回り5%程度」「入居率90%くらい」を目指すと公言しているハドソン・ジャパン。
その主な戦略は以下のとおりです。
- 入居対象者を女性に絞らず、上京する若者や外国人に拡大
- 約200あった管理会社を3社に集約し、運営効率化をはかる
- 家賃は3~7万円台に設定し、同一商圏内の家賃は統一
- 利便性の高い設備・サービス導入による入居率・収益性の改善
- 同一ブランドの他の物件には簡単な手続きのみで住み替えられるように
- 入居者の募集は、新ブランドの全物件を網羅する専用の募集サイトにて行う
スマホで鍵の操作ができる「スマートロック」や、電動キックボード・電動アシスト自転車のシェアリングサービスなどの導入も進めているハドソン・ジャパン。
こうした利便性向上によって入居率を高める「新規顧客の獲得」と同時に、同一ブランド間での住み替え手続き簡便化による住み替えニーズへの対応で「既存顧客のリピーター化」も狙っていこうという戦略です。
管理会社集約による運営効率化、知見の蓄積を通じた収益性の向上も目指しており、過去の事件による悪いイメージを払拭するための準備は着々と進んでいると言えるでしょう。
ハドソン・ジャパンの鏑木政俊社長は、社会問題となったかぼちゃの馬車事件を「不幸な形になった」としつつも、物件のリッチのよさや価格帯の安さなどを挙げ「うまく運用していきたい」と再生への意欲を語っています。
アメリカの巨大投資ファンド肝いりの再生事業である「TOKYO β」。
「入居率90%を目指す」と語るハドソン・ジャパン、その顧客獲得戦略からは学ぶことも多いのではないでしょうか。
まとめ
「かぼちゃの馬車」時代には、入居者が集まらず、ほとんどが空室のままという杜撰な運用で立ち行かなくなった物件が数多くありました。
そうした物件が、新しい運用会社・新しいコンセプトのもと、どのような再生を見せるのでしょうか。
「運用次第で不動産投資は変わる」というお手本となってくれるのでしょうか。
ハドソン・ジャパンの手腕に期待が高まります。