コラム
物件広告の内容、それで大丈夫?規制の内容を知って適切な広告配信を
さまざまな業界で広告の規制が厳しくなりつつある昨今。
とりわけ、取引価格が高額になりがちな不動産広告は『宅地建物取引業法』と『景品表示法(不動産の表示に関する公正競争規約)』の2つによって、厳しく規制されています。
この記事で、それぞれの内容について学んでおきましょう。
宅地建物取引業法
宅地建物取引業法(以下、宅建業法)では、主に以下の3つが定められています。
- 誇大広告の禁止
- 広告開始時期の制限
- 取引態様の明示
誇大広告の禁止
事実と著しく異なっていたり、実際のものよりも著しく優良・有利であると誤認させるような広告は、宅建業法によって禁じられています。
この「事実」「実際のもの」の対象となるのは、以下の8項目です。
- 所在:物件の所在地
- 規模:土地や建物の面積
- 形質:地目や建物の構造、築年数など
- 利用の制限:建ぺい率や容積率など
- 環境:日照や静かさの状況、学校や病院などの周辺環境
- 交通その他の利便:駅やバス停などの所在や、最寄り駅までの所要時間
- 代金や賃借などの対価の額および支払い方法
- 代金または交換差金に関する金銭の賃借のあっせん
広告開始時期の制限
物件が未完成の状態で広告を打ちたい場合、工事に関して必要とされる開発許可や建築確認を得、「実際に売ることができる」と事前に確認してもらわなければなりません。
一部で誤解されていますが、「開発許可の申請中」というステータスでは広告を打つことができませんのでご注意ください。
取引態様の明示
取引様態とは、宅地建物取引業者が土地や建物の取引を行う際の立場を示したものです。
売買の場合は、
- 売主
- 代理
- 媒介・仲介
の3つの取引様態があります。
不動産広告を打つ際は、この取引様態を明確に示す必要があります。
景品表示法(公正競争規約)
あらゆるビジネスにおいて、消費者への誤認を防ぐことを目的として定められた「景品表示法」。
景品表示法にはおおまかな方針のみが定められているため、昭和38年に、不動産業界に向けた具体的なルールとして「不動産の表示に関する公正競争規約(以下、公正競争規約)」が定められました。
制定以降、時代の変化などに応じて適宜改正が加えられてきた公正競争規約。
公正競争規約には、広告で使用する用語の定義や表示ルール、使用基準などが細かく定義されています。
その一部を見てみましょう。
表示基準や特定用語の使用基準
不動産広告に使用する用語の中には、明確に基準が定められているものも存在します。
以下はその一例です。
- 徒歩による所要時間は80mを1分間とし、1分未満の端数は切り上げて表示する
- 居室と認められない部屋は「納戸(N)」や「サービスルーム(S)」と明示しなければならない
- 学校、病院などは、原則として現に利用できるものを表示しなければならない
- 建築後1年未満、かつ一度も居住の用に供されていない物件のみ「新築」と表示できる など
たとえ建築後1年未満であっても、誰かが居住したことのある物件は「新築」と表示できない、という点には注意が必要です。
使用が禁止されている用語
表示内容の根拠を示す資料がある場合を除き、以下のような用語は使用が禁止されています。
- 「完全」「絶対」「万全」のように、確実性や手落ちのなさを意味する用語
- 「日本一」「日本初」「超」「業界一」「抜群」のように、他の不動産会社よりも優位であることを意味する用語
- 「特選」「厳選」のように、一定の基準によって選別されたことを意味する用語
- 「最高」「最高級」のように、物件やその特性が最上級であることを意味する用語
- 「買得」「格安」「破格」のように、物件の価格や賃料が著しく安いという印象を与える用語
- 「完売」のように、物件の人気が著しく高く、売れ行きがいいという印象を与える用語
日常的に気軽に使っている用語であっても、消費者に誤解を与えかねないため、不動産広告においては使用できない用語が多々あります。
不動産広告を考える際は、こうした用語に気をつけましょう。
まとめ
入居者を集めたい、物件の魅力を伝えたいと思うあまり、こうした広告規制に違反してしまっては一大事。
違反内容によっては、指示処分や業務停止処分に留まらず、免許取消処分や罰金刑などが科せられる恐れもあります。
知らず知らずのうちに広告規制から外れてしまわないよう、不動産広告を打つ際は、事前に『宅地建物取引業法』と『景品表示法(不動産の表示に関する公正競争規約)』について一通り学んでおくと安心です。
もちろん、こうした規制をすべて網羅することは困難ですので、不動産会社の手助けを存分に活用つつ対応していきましょう。