コラム

ホームインスペクションをご存知ですか?物件の“健康診断”で安心の取引を

不動産の購入を検討している方であれば「ホームインスペクション」という言葉を耳にしたこともあるのではないでしょうか。

ホームインスペクションは、中古住宅の売買時に行われる「住宅診断」です。

「住宅の健康診断」と表現されることも多く、アメリカでは中古住宅取引全体における7~9割(州によって変動)でホームインスペクションが活用されており、ホームインスペクションありきの取引が常識となりつつあります。

日本でも2018年4月からホームインスペクションの説明が義務化(中古住宅取引の場合)され、浸透が進んでいるホームインスペクション。

この記事では、そんなホームインスペクションについて解説します。

ホームインスペクションとは

ホームインスペクション(住宅診断)とは、住宅に精通したホームインスペクターが住宅の劣化状況や欠陥の有無などを確認し、必要に応じてアドバイスを行ってくれる専門業務です。

現時点、あるいは近い将来に修繕すべき箇所があれば、修繕が生じる時期や費用の目安なども教えてもらうことができます。

日本語で「住宅診断士」とも呼称されるホームインスペクター。

ホームインスペクターとして活動できるのは、国土交通省による「既存住宅状況調査技術者講習」を終了し、登録を受けた建築士のみ。

つまり、国が定めた基準を満たした建築士が、優れた専門家の見地から住宅の状況を診断してくれるというわけです。

ホームインスペクションの対象となるのは「築年数2年以上の中古住宅」です。

新築住宅や事務所、店舗などはホームインスペクションの対象になりません。

また、調査の種類によっては物件の一部を破壊することもあるため、共用部分の多いマンションよりも中古戸建てを対象とすることが一般的です。

どのような時にホームインスペクションを活用するのか

一般的に、ホームインスペクションは中古住宅を売買する前に行われます。

中古住宅のコンディションを明確にし、安心して取引を行うことがその目的です。

ホームインスペクションは売主・買主どちらが行うケースもありますが、

売主が行う場合は、

  • 住宅の信頼性を高め、適正価格で売却したい
  • 住宅の欠陥などが原因で売却後にトラブルが生じるのを避けたい

買主が行う場合は、

  • 住宅の購入後に欠陥が見つかり、高額な修繕費が生じることを避けたい
  • 購入後のリフォーム費用相場を予め把握しておきたい
  • 購入後に後悔しないため、信頼できる専門家に物件を評価してもらいたい

などの理由で行うことが多く見られます。

ただし、買主がホームインスペクションを行いたい場合、売主に対して買付証明書(※)を提示し、かつ売主にホームインスペクションの実施を了承してもらう必要があります。

調査によって物件の一部を破壊する必要が生じたり、ごくまれにホームインスペクションを「物件の粗探し」と捉える売主の方もいたりするためです。

※:購入の意志がある旨を正式に表明した書類

とはいえ、ホームインスペクションは売主・買主双方にとって心強い安心材料となるため、ホームインスペクションの実施を断られるケースはほとんどないと考えられます。

ホームインスペクションの費用相場

ホームインスペクションの費用は、ホームインスペクションを依頼した人(売主か買主、あるいは仲介している不動産会社)が支払うこととなります。

そんなホームインスペクションの費用相場は、

  • ホームインスペクションの種類(一次検査・二次検査)
  • 対象となる物件の種類
  • 対象となる物件の広さ

によって左右されます。

ホームインスペクションには「一次検査(基本調査)」と「二次検査(詳細調査)」があります。

病院に例えるなら「健康診断」にあたる一次検査では、目視で行える基本的な調査を。

「精密検査」にあたる二次検査では、屋根裏や床下に入り込んだ調査や、ドローンを用いた上空からの調査など、より踏み込んだ詳細な調査を行うことになります。

マンションの場合、屋根裏や床下などの調査が困難なため、目視で行う一次検査のみ行うことが一般的です。

ホームインスペクションの種類費用相場所要時間相場
一戸建て(30坪程度の場合)一次検査5~7万円程度3時間程度
二次検査6~12万円程度一次検査+1時間程度
マンション(70㎡程度の場合)一次検査4~6万円程度2時間程度
二次検査

まとめ

対象となる住宅の種類や規模、調査内容によっても異なりますが、ホームインスペクションは数万~数十万円で実施できるものです。

すべての瑕疵がホームインスペクションで明らかになるわけではありませんが、

「素人目では綺麗に見えたが、購入後すぐに外壁の塗り直しが必要になった」

「床下がシロアリに侵食されており、莫大な修繕費が発生した」

など、ホームインスペクションを行っていれば防げたであろうトラブルも多々あります。

ホームインスペクションを行わなかったことで必要となる修繕費は、最悪の場合、数百~数千万円規模にのぼる恐れもあります。

こうしたトラブルを可能なかぎり防ぐための「保険」として、中古住宅を売買する際には、ぜひホームインスペクションの活用をご検討ください。

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