コラム
IT重説とは?メリット・デメリットを分かりやすく解説
近年、コロナ禍でも便利な「オンライン内見」がたびたび話題になっていますが、同様にビデオ通話機能を活用した「IT重説」もあることをご存知でしょうか?
不動産契約時に決して欠かすことができない重説。
今回は、そんな重説をオンライン上で行うIT重説のメリット・デメリットをご紹介します。
IT重説とは
重説とは 「重要事項説明」の略語で、不動産の売買契約・賃貸借契約の締結前に、契約上の重要事項を買主・借主に対して説明することを指します。説明は原則対面で行い、身分を提示した宅地建物取引士が担当します。重説は不動産に関する情報や法律知識に乏しい買主・借主が不利益を被らないための措置で、必ず実施するよう宅地建物取引業法第35条によって義務付けられています。 |
IT重説とは、ビデオ通話機能などを利用して重説を行うことを意味します。
導入されたのは2017年10月1日からで、現時点(2022年4月現在)では賃貸契約時においてのみ実施可能となっています。
IT重説を導入するためには、
- 顧客と不動産会社の担当者が双方向でやり取りできるIT環境を整備する
- 説明開始前に、IT環境の映像および音声が説明に足る状態かどうかを確認する
- 宅地建物取引士が記名押印した重要事項説明書と、説明に必要な資料を顧客に事前送付する(PDFファイルをメール送付するなどの対応は不可)
- 顧客に対して宅地建物取引士証を提示し、身分を証明する
- IT環境に不具合があれば重説を中断する
といった、国土交通省が定めた遵守事項を守らなければなりません。
なお、不動産の売買契約は、
- 賃貸契約に比べて取引価格が高額になる
- 説明事項や関わる人数などが膨大になりがち
などの理由からまだIT重説の導入が認められておらず、現在は導入の可否を窺う社会実験の段階となっています。
IT重説のメリット
オンライン内見同様、導入する不動産会社が徐々に増えつつあるIT重説。
まずはそのメリットを見てみましょう。
- 店舗に出向くための手間や移動費がかからない
- 来店が困難、避けたいなどの場合にも行える
- 日程の調節がしやすい
- 重要事項説明書の理解度が深まる
- 説明内容をデータ保存することも可能
- 利便性の高さによる集客効果が期待できる
店舗に出向くための手間や移動費がかからない
IT重説における最大のメリットが、店舗に出向く必要がないという点ではないでしょうか。
不動産会社が近場にあるならまだしも、重説を受けるためだけに遠方の不動産会社まで出向くのは相当な負担ですよね。
自宅で気軽に重説を受けることができるIT重説であれば、移動にかかる手間や費用も一切必要ありません。
来店が困難、避けたいなどの場合にも行える
IT重説は、
- 不動産会社が遠方
- 怪我や持病、子育て中などで出歩くことが難しい
- 感染病への懸念のため、外出を自粛している
などの理由で来店ができない、あるいは避けたいという方にとっても大変便利です。
持病などで身動きが取りづらい借主も、勝手知ったる我が家で重説を受けられるとなればリラックスして説明を受けることができるでしょう。
日程の調節がしやすい
忙しいなか、手間と時間をかけて不動産会社の店舗に来店しなければならない重説。
一方のIT重説は、ビデオ通話機能に対応したPCやスマホを準備しさえすれば、その場ですぐに説明を受けることができます。
そのため、職場からの帰宅後などでも時間を確保しやすく、日程の調整がスムーズに行えるというメリットがあります。
重要事項説明書の理解度が深まる
IT重説を行うにあたっては、捺印済みの重要事項説明書・その他説明に必要となる資料一式を、事前に借主に書類送付しておく必要があります。
借主はそれらの書類を予めチェックしておくことができますので、ある程度内容を把握した状態でIT重説に臨むことができ、結果的に内容の理解度が深まることが期待できます。
説明内容をデータ保存することも可能
IT重説の参加者全員から同意を得られれば、説明中のビデオ通話を録画することも可能です。
録画したムービーは好きなタイミングで見返すことができますので、
「あの時の説明、もう一度聞いておきたいな」
「資料を見返していて気付いたけど、ここの説明は何と言っていたっけ?」
といった疑問を借主自身で解決することができますよ。
利便性の高さによる集客効果が期待できる
さまざまなメリットがあるIT重説は、借主にとっても魅力的な選択肢です。
そんな「IT重説に対応している」ということは、競合他社との差別化にも有効であると考えられます。
IT重説のデメリット
メリットの多いIT重説ですが、把握しておきたいデメリットもあります。
主だったものは以下の5つです。
- ビデオ通話用のツールを導入しなければならない
- 双方に安定したネット環境が求められる
- 手軽であるぶん、内容が軽視されやすい
- 質問や確認がスムーズに進まない恐れも
- IT重説のための社内研修が必要
ビデオ通話用のツールを導入しなければならない
IT重説を行うためにはビデオ通話用のツールが欠かせません。
ツールによっては、導入・運用に際して費用が発生するもの、借主側にアプリダウンロードをしてもらう必要があるもの、通話時間に制限があるものなどもあるでしょう。
どのツールがIT重説に適しているかは、導入前にしっかり比較検討しておきましょう。
双方に安定したネット環境が求められる
説明にビデオ通話を用いる以上、安定したネット環境は必要不可欠です。
ネット環境が不安定だと途中で説明が止まってしまったり、うまく音声が聞き取れないなどのトラブルに繋がる恐れがあります。
手軽であるぶん、内容が軽視されやすい
自宅でリラックスして説明を受けられるというのはIT重説のメリットですが、裏を返せば、気が緩んでしまって大切な説明を聞き流してしまう恐れも……。
後々「聞いていない」「知らなかった」などのトラブルに発展しないよう、集中して聞いてもらうための工夫が必要です。
質問や確認がスムーズに進まない恐れも
対面に比べるとどうしてもコミュニケーションが取りづらいビデオ通話。
IT重説においても、借主が質問しようとしたタイミングで宅地建物取引士が話し始めてしまうなど、うまく会話がはまらない場面が出てくるかもしれません。
そうした時に借主が質問を控えてしまわないよう、気軽に声をあげやすい環境を提供できるといいですね。
IT重説のための社内研修が必要
説明する内容自体は同じでも、対面とビデオ通話ではなにかと勝手が変わってきます。
本番でつまづいてしまって借主に不安感を与えないためにも、IT重説用の社内研修をしっかり行ってから臨むことをおすすめします。